今回は、スポーツバイクとしてのミニベロで効率よく有酸素運動をするための、正しい乗車ポジションについてご説明します。
有酸素運動には自転車がいちばん
自転車に乗ると脚が太くなると思っている方が未だにおられるようですが、大間違い!それは瞬発力がいる競輪選手のイメージか、誤った乗り方をされている方の話だけで、今や自転車は足腰を痛めない有酸素運動として全身引き締めエクササイズにとても有効的なツールとされています。有酸素運動による脂肪の燃焼は、20分以上続けてはじめて効果が得られます。例えば2時間の運動で比較した場合、ウォーキング、ランニングに比べてサイクリングはカロリーの消費効率が高く、スイミングと同水準とされています。ランニングや、特にスイミングを2時間続けるのは困難ですが、サイクリングはいたって簡単。家の前からスタートでき、移動手段にもなり、遠くへ行けば景色も変わって飽きにくい、気軽にできるスポーツと言えます。
ロードバイクと同じ乗車ポジションが取れるミニベロも
レースに特化したロードバイクは自分の身体能力をフルに推進力に変換できる自転車ですが、様々なフレーム形状の存在するミニベロの中にはマニアの間で「ミニベロロード」などと呼ばれるタイプの自転車も存在します。ホイールの小さいミニベロは直進安定性を担保するためにホイールベースをロードバイク並みに取っているものも多く、近年ではロングライドにも都合の良いドロップハンドルを標準装備したミニベロも増えています。フラットバーハンドルを備えたミニベロでもハンドルやサドルの高さを調整することでより良い乗車ポジションに近づけることができるので、ぜひ参考にしてみてください。
スポーツバイクの正しい乗車ポジションは、いくつかのポイントを押さえれば簡単です。(各画像クリックで拡大)
<サドルの調整>
サイクルショップでのアドバイスに従ってバイクを購入することでバイクそのもののサイズは自分に合っていることを前提にすると、バイクのセッティングはペダルを基準にしてまずはサドルの高さ調整から行います。この順番を無視して後からサドルの高さを調整しても、正しいポジションにはなりません。効率のいいペダリングをするには、筋肉のストレスが少ない状態にサドルをセットします。
サドルを下げすぎて脚の力だけでペダルを漕ぐ方を街でよく見かけますが、冒頭で触れたとおり太い脚になる最大の原因となります。全身引き締めエクササイズには、体重をハンドルとペダルとサドルの3ヶ所に分散させて全身で支え、引き締めたい部分を効果的に動かすことが早道。脚だけに頼らず全身を使って、軽めのギアで長時間走ることを意識して下さい。

目安として、計算で割り出す方法も…。地面から股下までの距離を測り、0.875をかけるとクランクの中心からサドルの上面までの高さが出る。バイクに跨がって設定したサドルの高さを確認する意味で、こちらの方法で試してみても良い。何れにしても、ここで決めたサドルの高さを基準にしつつ、実際に走ってみて自分の走りやすい高さに微調整していく。
サドルの取り付け角度は水平が基本です。微妙に前上がりや前下がりを好む方もおられますが、それは長年の経験によるもの。初心者の方はまずは水平に設定しましょう。

「お尻が痛いから前下がりに」という方を稀に見かけるが、腕や腰に負担がかかり快適に走ることができない。高さ、角度と同様に前後の位置も重要。サドルの位置が前過ぎても後ろ過ぎても快適に走ることはできない。実際に乗り比べて確認しよう。
信号待ちなど、ちょっと停まる時はこのスタイルで。スタート時はペダルを漕いでバイクを進めてからシートに座る。乗り降りする際にはここからが、スポーツバイクの基本です。
「高さ」、「角度」、「前後の位置」。これでサドルの位置の調整は完璧です。理解すれば簡単な内容ばかりなので、一気に先へ進みましょう。
<ハンドルの握り方>
バイクのセッティングを終えて、次に身体のフォームです。まずはハンドルの握り方から。ハンドルを握る場所によって握り方も複数あるので、まずはそこから確認しておきましょう。
♦アップライトポジション:ハンドルのフラット部分を持つポジションです。ブレーキレバーに手が届かないため市街地などには適しませんが、リラックスしたい時、ゆっくり走る時などに向いています。その他、フラット部分の端、ハンドルが曲がり始めるショルダー部分を持つポジションなどもよく使われます。
♦ブラケットポジション:ある程度のスピードを出したいときに有効なポジションで、そのままブレーキングが可能なため市街地でも多用できます。
♦下握り(ドロップ部)ポジション:前傾姿勢で空気抵抗が少なくなるため、高速走行に向いたポジションです。
ハンドルの角度自体はアーレンキーで簡単に調整できます。また、様々な長さ、角度をもったステムが市販されているので、ステムそのものを交換してハンドルの位置を調整する方法もあります。
<ハンドルを持つ腕の形>
身体のフォーム、2番目は腕の形です。上半身の支えるうえで、腕の力の入れ具合や角度が重要となります。肩に力が入りすぎるとハンドル操作やブレーキ操作がスムーズにできません。リラックスした状態でハンドルグリップに手を添えましょう。顔を上げて視線は遠くを見るように心掛けることで、周りの状況を察知しやすく危険回避にも有効です。まずは前方から見た場合の写真で見比べてみましょう。

左(NG例):腕に力が入りすぎると路面から衝撃を受けた時に身体に負担がかかる。写真は腕に力を入れすぎて逆に反っている例。 右(OK例):大きなボールを抱えるようなイメージでハンドルに軽く手を添えるのが理想。
横から見た場合の比較です。肘はサスペンションの役目を担います。軽く曲げて路面の衝撃を和らげましょう。

左(NG例):シティサイクル(軽快車・ママチャリ)に乗っている方に多い背中の反り返り。腕も突っ張っていると路面からの振動・衝撃がダイレクトに伝わってしまう。首が疲れて下を向いてしまう方もおられるが、とても危険なので要注意。 右(OK例):まずは肩の力を抜いてリラックス。そして視線は遠くを心掛ける。
<正しい位置でのペダリング>
ペダルに土踏まずやかかとの部分を載せて力任せに踏み込んでも美脚にはなりません。余計な力が必要なばかりか、太ももの前の筋肉しか使わないので非効率とされています。ペダルに置く足の正しい位置は、拇指球(ぼしきゅう)と呼ばれる親指の付け根あたりです。

左(NG例):初心者によく見られる、土踏まずで踏む様子。ペダルの角度が安定せず力が効率よく伝達されないため、筋肉にも負担をかけ足首やアキレス腱を痛める原因となる。 右(OK例):破線部分がペダルの中心軸。ここに拇指球を合わせると効率よく力がペダルに伝わり、平地では軽く、登り坂では長く走ることが可能になる。足首の角度を変えないように、スムーズに回転させる。
<正しい形でのペダリング>
脚のフォームを前から見た比較。ペダルを踏み下ろす際に、膝へのストレスがかからないようにするのが基本です。引き締まった美脚を目指す方は、軽めのギアでクルクルと軽快に回すのもポイントです。

左(NG例):脚を開けすぎると空気抵抗が増すばかりか、車体の安定まで損なう。 中央(NG例):空気抵抗は減りそうだが、膝関節を痛める原因になるためこれもNG。 右(OK例):垂直にまっすぐ下ろす、理想的な形。
完成形!
フォールディングバイクやフラットバーハンドルのミニベロでも、サドルの高さやハンドルの遠さなど可能な範囲で調整することで、有酸素運動により良いポジションに近づけることができます。自転車による運動は、有酸素運動として全身引き締めエクササイズに有効なだけでなく、心肺機能を高め、冠動脈疾患のリスクを下げ、高血圧や骨粗鬆症、うつの予防など、さまざまな健康効果が期待されています。また、脳への刺激になって認知症予防にも有効とされています。
スムーズに走るスポーツバイクで風を切って走るのは、純粋に楽しいもの。ジムに行くまでが面倒になって続かない方もおられますが、まずはスポーツバイクを日々の生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。