旅行先に自転車も持っていけば、時間に縛られずに行動範囲も広がりとても便利。駅から距離のある観光地を巡ったり、いつもとは違うロケーションでサイクリングを楽しんだり。そんな時に便利なのが、工具無しで誰でもサッと折りたためるフォールディングバイク(折りたたみ自転車)。休日の朝に思い付きで出かけられる、気軽さも人気です。公共交通機関を利用して自転車を運ぶことを輪行(りんこう)といい、性別年齢を問わず愛好家が増えています。今回は、輪行の中でも特に多くの方に利用されている、フォールディングバイクで鉄道輪行をする方法についてご紹介します。
輪行とは
輪行(りんこう)とは、公共交通機関を利用して自転車を運ぶことを指します。サイクリングや旅行の行程の一部を自走せずに鉄道、船、飛行機、バスなどを利用するもので、遠くへ移動したり、時間を短縮することができます。とても便利な移動方法ですが、利用する交通機関で定められたルールを守るだけでなく、他の方への気配りも必要です。その点に気をつければ、とても簡単に実行することができます。
輪行のメリット
・異なる場所で輪行すれば、ルートを自由に考えられる
・楽に長距離を移動できる
・比較的安価に移動できる
電車輪行のメリット
・全国くまなく駅がある
・天候や体調の急な変化や機材トラブルにも対応できる
昨年末にツイッターでアンケートを実施したところ、協力いただいたフォールディングバイクオーナーに限れば鉄道での輪行経験者は多めの結果が出ています。

2018年12月13日から7日間実施
鉄道輪行に向いた自転車とは
大手鉄道会社では、自転車は折りたたんだり分解してコンパクトにし、専用の袋に入れて持ち運ぶことが義務付けられています。ロードバイクなどでも輪行はできますが、分解から固定、梱包、そしてまた組み立てといった手順が難しく感じらたり、慣れないと時間がかかることから、移動先でのサイクリングに高い走行性能を必要としないのであれば、誰でも気軽に折りたためるフォールディングバイクが最適です。
輪行用に自転車を選ぶポイント
一口にフォールディングバイクといっても様々な製品が販売されているので、走行機能と折りたたみ機能のバランスを考えながら、自分にあった製品を選ぶことが大切です。
・折りたたみ方法がシンプルで簡単なタイプ
・折りたたみ時によりコンパクトになるタイプ
・折りたたみ時に持ち運びやすい形になるタイプ
・車体が軽いタイプ

今回使用しているフォールディングバイクは、直感的に折りたためるDAHONのK3というモデル(Color:レッド×マットブラック)。14インチでコンパクトながらも3段変速を備えてしっかり走り、本体重量は7kg台と軽量。
鉄道会社の定めるルール
多くの大手鉄道会社では、JRグループの定める「旅客営業規則 – 無料手回り品」に倣って自転車輪行時のルールを運用しています。今回当記事に協力いただいた西日本旅客鉄道株式会社(以下JR西日本)では、「JRおでかけネット」内の「きっぷのルール」のページにおいて「持ち込める荷物」として、以下のとおりアナウンスしています。
・荷物のサイスは縦・横・高さの合計が250cm以内(長さは2mまで)
・重さは30kg以内のものを2個まで
・解体(分解)し専用の袋に収納するか、折りたたみ自転車は折りたたんで専用の袋に収納する
・車体は一部でも袋から露出しないようにする

画像は2019年2月時点のアナウンスのスクリーンショット。必要に応じて変更される可能性もあるので、利用前に必ず確認する。また、鉄道会社によってルールの内容が異なる場合があるので、利用する交通機関のルールを必ず確認する。
各社の定めるルールは最低限のものです。サイクリストの一人として、また社会人として他の一般のお客様に迷惑が及ばないよう、マナーにも気をつけることが必要です。
輪行 実践編
前置きが長くなりましたが、輪行の方法についてご説明します。今回はJR西日本の協力で、日本最大級の鉄道博物館「京都鉄道博物館」にお邪魔しています。使用するフォールディングバイクは、軽量&コンパクトさが話題のDAHON K3。輪行袋はK3にジャストフィットのSlip Bag miniを用意しました(DAHONでは車体に合わせて4つのサイズの輪行袋をラインアップしています)。

右手に持っているのは展開前の輪行袋。K3は専門誌のインプレッションで「よほど高速で距離を稼ぐような走り方を求めない限り、輪行サイクリングでこのK3以上の機動力を持つモデルは考えられません。」と評価されほど、輪行に都合よいとされているモデル。ただし、輪行に求めるスタイルは人それぞれなので、自分に合った製品を選ぶことが大切。
輪行の方法は基本的には「折りたたんで輪行袋に入れる」「担いで列車に持ち込む」「目的の駅に到着したら車体を展開する」だけです。
車体は駅舎に入る前に折りたたみ、輪行袋に入れるのがマナーです。作業はあっという間ですが、他の方の通行の邪魔にならない場所で、点字ブロックの近くも避けます。大きな駅で乗降する場合は、構内で長い距離を歩かなくても済むように、ホームから駅舎の外までの距離が近いルートを予め調べておくと便利です。

折りたたんだだけではペダルが突出して危険なので、フォールディングバイクでは折りたたみペダルや簡単に脱着できるペダルを標準で装備している場合も多い。なお、標準装備のペダルだけでなく、高品質なペダル専門メーカー三ヶ島製作所 MKSの脱着式ペダルなどを別途購入するのも良い。*参考Link → MKSの脱着式Ezyシリーズに新製品が登場!ペダルは目的に応じて取り換える時代に 輪行袋は、使わない時に荷物にならないように薄くて軽いものや、クッション性を持たせて衝撃を緩和するものなどがある。生地が薄い袋の場合は、ショルダーベルトで車重を支えるタイプが無難。輪行袋は「専用の袋」がルール。ゴミ袋や自転車カバーなどを利用するのはNG。その他、リアディレーラー(変速機)の突起を少しでも少なくするように内側に入れておくなど、細かいテクニックがある。
輪行袋は、車体を担ぐためのほか、タイヤやチェーンが他の方に触れて汚れるのを防ぐ目的もあります。多くのフォールディングバイクブランドでは車体サイズに合った輪行袋をオリジナルで用意していることも多いので、オプション製品をチェックしてみるのも良いかも。自転車のタイヤや付属パーツのキャスターを使った転がしは禁止されていますが、重さがネックになる場合はキャスター付き輪行袋を利用する手もあります。ただし、輪行袋に入れているとはいえ自転車はパーツが出っ張っていたりして危険なので、移動する際は他の方に当たらないように注意して歩きます。改札口を通る際も、車体を機械に当てないように気をつけましょう。鉄道輪行では、混雑する時間帯や混雑する駅の利用を避けるようにします。混雑時は1本見送る余裕を持ちたいですね。

全てをとおして言えることだが、混雑した中を歩かない、階段やエレベーターは人が少なくなるのを待ってから利用するなど、他のお客様の邪魔にならないように余裕を持った行動を心がけたい。ホームに自転車を置く場合は車体から離れないようにし、点字ブロック周辺には絶対に置かないようにする。
鉄道輪行では駅に停車するたびに不特定多数のお客様が乗り降りしたり、急なブレーキも考えられるため、自転車はできるだけ安全な状態を考えて置くようにします。
列車内でのルールやマナー、ヒント
・他のお客様の「邪魔にならない場所」に、「安全な状態」で置くのが基本。
・複数人で乗車する場合は、一箇所に固まらずに車両やドアを分散して乗り込む。
・急ブレーキに備え、進行方向の壁際で手や体で押さえて、自転車が動いたり倒れたりしないようにするのが基本。
・ベルトで手すりなどにくくり付ける場合もあるが、自転車から離れるのはほとんど乗客のいない路線に限定する。
・車内に大型手荷物置場がある場合は利用できることもあるが、何れにしても非常時に自転車が凶器とならないように注意する。
・新幹線や特急などクロスシートの列車では、最後列座席の後ろの空間が比較的置きやすい。
・ドア近くの小さなスペースを利用する場合は、乗り降りされるお客様が自転車に当たらないように細心の注意を払う。
・運転席後ろの壁を利用する場合は、乗務員の出入りするドアを塞がないようにする。
・譲り合って利用することを終始心掛ける。
以上が、鉄道輪行をする際のルールやマナーです。目的の駅に到着したら、駅舎から出て車体を展開します。あとはサイクリングを思う存分楽しんでください。
まとめ
・自転車をコンパクトにするには、フォールディングバイクが楽。
・列車内や改札内だけでなく、駅舎に入る前に輪行袋に入れるのがマナー。
・車内では邪魔にならないところに、非常時でも危険の少ないように置く。
・決められたルールを守るだけでなく、全ての人が快適に乗車できるように気を配る。
未経験者にはハードルが高いイメージもありますが、ポイントを押さえれば誰でも簡単に楽しめるのが鉄道輪行です。ふらっと知らない駅まで列車に乗って、改札を抜ければちょっとした冒険気分。素敵なカフェを見つけたり、美しい景色に出会ったり。切符代だけで休日がこんなに有意義になるなんて!って思うのではないでしょうか。(撮り鉄の方にもオススメです!)
*協力
西日本旅客鉄道株式会社(JR西日本)
京都鉄道博物館
*アイテム
自転車 DAHON / K3(Color:レッド×マットブラック / 2019年モデル)
輪行袋 DAHON / Slip Bag mini
ヘルメット 日本パレード / CAPOR Walnut(ダークグレー)
*この記事で紹介している情報は、2019年2月時点の取材に基づいています。
*博物館内で輪行袋を持ち運んでいるのは鉄道利用シーンの演出で、JR西日本の許可のもとに撮影しています。