世界中のサイクリストから注目されている「しまなみ海道」の拠点 広島県尾道市に、世界の選りすぐりのハイスペックなeBikeをレンタサイクルとして貸し出すスポット「レンタサイクルステーション尾道ベース」がオープンしました。今回 MINI LOVEではガイド付きツアーに同行してきましたので、ご紹介いたします。
広島市と岡山市のほぼ中間に位置し、せとうちの穏やかな海と小高い山に抱かれた独特の景観を持つ尾道は、古くから文人墨客に愛され、多くの映画の舞台にも選ばれるなど、時代を越えて文化を育んできました。また、海運による物流の集散地として機能し、明治時代には山陽鉄道が開通し鉄道と海運の接点となったことから、永きにわたり広島県東部で最大の都市として繁栄しました。文化と商業が交差する尾道には、大橋でつなぐ瀬戸内の美しい島々の明るく開放的な風景とともに、建物が密集する急な山肌の独特な景観もあり、様々な風景を一度に味わえる魅力的なエリアとして知られています。
また尾道は、瀬戸内海に浮かぶ島々を橋梁で繋ぎ愛媛県今治市まで結ぶ「しまなみ海道」の玄関口として知られ、風光明媚な景色の中を自転車で縦断できるサイクリングコースは「サイクリストの聖地」と呼ばれるほど、世界中のサイクリスト達から注目されています。
そんな素敵なエリアですが、尾道には「坂の町」と呼ばれるほど坂が多く、また、しまなみ海道も島の中や橋を渡るごとに坂があり、特に年配の方はサイクリングを躊躇することも多そうです。その解決策となるのが、今回ご紹介する「尾道ベース」によるハイスペックなeBike(電動アシスト付スポーツ自転車)のレンタサイクルです。

尾道ベースの前に並べられた、取材当日に貸出し予定のeBike。尾道や今治では他にもレンタサイクルのサービスがあるが、こちらではハイスペックなeBikeをレンタルできるだけでなく、製品を熟知したスタッフによる完璧な整備状態もウリのひとつだ。
今回は、サイクルハウスしぶや × おのなび旅行社(尾道観光協会)の企画による【楽チン島旅 e-BIKEでしまなみ海道サイクリング30km 】と題したガイド付きツアーに同行させていただきました。当日参加されたのは、以前ご近所だった縁から30年来のお付き合いがあるという皆さん。まずはスポーツバイクの乗り方やeBikeの特徴についてレクチャーを受けます。
尾道からCycleship LazuLiで生口島へ
今回のツアーでは、尾道港ポートターミナルから生口島の瀬戸田港まで定期便を利用して移動し、生口島、因島、向島をサイクリングして尾道に戻ってきます。乗船したのは、昨年デビューしたばかりの瀬戸内クルージングのCycleship LazuLi(サイクルシップ ラズリ)。記念に写真を撮るのも、楽しみの一つですね。

尾道ベースはJR尾道駅から徒歩5分圏内にあり、港にも近いのでとても便利。LazuLiは、自転車をそのまま積み込んで航行することができる客船で、旅客定員75名(うち客室内45席)、自転車積載台数(参考)約50台のほか、Wi-Fi 無料接続、モバイルコンセントはもちろん、バリアフリー対応設計と、最新の設備を誇る。

LazuLiの1階は客室や駐輪場、2階デッキにもサイクルスタンドが設置され、しまなみ海道のサイクリングを支える強力な移動手段になっている。2階デッキに上がる階段の中央はスロープになっていて、車体を押し歩くこともできる。初めて「サイクルオアシス」の認証を受けた船で、空気入れや工具も備えている。
10月中旬の気持ちのいい天気。多くの船が行き交う尾道水道を抜けると、因島大橋が見えました。向島から因島に渡る際に通る、しまなみ海道で唯一、自動車道の下に自転車・歩行者道がある橋です。

LazuLiは新しいだけあって船内もとても綺麗、そして最新の設備が整っている。コンセントやWi-Fiもあるので、ネットを使うのにも便利。美しい島々の景色を眺めていると、あっという間に瀬戸田港に着いた。
快適な船旅を終え、生口島に到着しました。いよいよここからサイクリングの始まりです。素晴らしい天候に恵まれ、期待が高まります。
初めてのしまなみサイクリングは生口島からスタート
生口島は、平山郁夫美術館や耕三寺、野外彫刻作品が点在する島ごと美術館など、歴史と文化の香りにあふれている、観光スポットの多い島です。瀬戸内しまなみ海道の通る6つの島のうちほぼ中央に位置する島で、隣の高根島との間の生口瀬戸に古くから栄えた港、瀬戸田が広く知られており、瀬戸田が島の代名詞にもなっています。また生口島は、国産レモン発祥の地、レモン生産量日本一であり、全国有数の柑橘類の産地となっています。
一行は瀬戸田港を出発し、古きよき面影を残す「しおまち商店街」方面へ。

「しおまち商店街」は瀬戸田港から耕三寺まで約600メートルの参道に立ち並ぶ約50店舗で構成された商店街で、正式名称は「せとだ本町商店街協同組合」。ゆったりと時間の流れる商店街には、メディアでお馴染みの有名店も。
瀬戸田の町並み散策。「しおまち商店街」を通り抜けると、すぐその先で耕三寺の前を通ります。

瀬戸田は古くから塩田が開発されるなどし、瀬戸内海の交通の要衝として栄えてきた町で、この辺りには平山郁夫美術館や「西の日光」とも呼ばれる耕三寺、朱塗りの美しい三重塔(国宝)のある向上寺といった観光スポットも多く集まる。
平山郁夫美術館をかすめ、海岸沿いの道に出ました。少し汗ばむくらいの陽気ですが、eBikeなので汗はかかず、逆に気持ちのいい風を受けながら走ることができます。
そしてしまなみサイクリングではお約束の、ジェラート専門店 ドルチェの瀬戸田本店へ。土地の美味しいものをいただくのも、「楽チン島旅」の楽しみのひとつです。

海の見えるウッドデッキでしばし休憩。ジェラートは瀬戸内でとれる柑橘類を中心に、保存料などを一切使わず天然素材で作られる。人気は伯方の塩、瀬戸田のデコみかん、尾道の桃などの定番以外に、季節限定のメニューもオススメ!
ドルチェの前で記念撮影などを楽しみ、またスタート。ようやく本格的なサイクリングっぽくなってきました。レンタサイクルの中には結構高価なモデルもあるのですが、写真からはほのぼの、ゆったり気分な雰囲気が伝わってきます。eBikeでのサイクリングは頑張らない、こんなところがいいですね。
しばらく走ると、雄大なフォルムの生口橋が見えてきました。この後すぐに因島へ渡る橋です。

島内の一般道と、しまなみ海道の各橋梁との間には、専用の自転車道(自動二輪との併用区間あり)が整備されている。比較的緩やかな勾配で整備されているため初心者でも走れるが、橋を渡るたびに坂を上るのは億劫になり、eBikeのありがたみを感じる。eBikeなら脚力の弱い方でも楽に坂を上れるので、特に年配の方には「尾道ベース」のレンタサイクルを知っていただきたい。
優美な生口橋を渡り因島へ
生口橋を渡り因島に入ったところで休憩。実は今回のツアー参加者のうち4名の皆さんは、車ではしまなみ海道を走ったことがあるものの自転車で走ってみたいということになり、脚力に自信がないのでeBikeでのツアーに参加されたそう。スイーツも楽しみながらのんびり景色も堪能でき、eBikeでのサイクリングは高評価でした。
今回のツアーで参加者が利用したeBikeはこちら。尾道ベースではこれらの車体以外にもレンタサイクルが用意されているので、公式サイトで確認してみてください。(TernのE-Cargo Bike「HSD」も導入される予定)

世界的に人気の折り畳み自転車birdyで有名なドイツメーカー RIESE & MÜLLER(ライズアンドミューラー)のeBike Tinker。内装変速ハブ Shimano Alfine 11速を搭載することでメンテナンスの簡単さとなめらかで静かな走りを兼ね備えており、さながらドイツの高級車を連想させる乗り心地が注目の的。

太いタイヤで乗り心地も良く、街乗りに適したbenelli(ベネリ)のZERO N2.0 FAT。リアキャリアにバッテリーがさり気なくレイアウトされている。benelliはイタリアで1911年に自動車やオートバイのスペアパーツ製造会社として創立され、100周年を迎えた2011年に電動アシストの発売を開始した歴史あるブランド。(写真の車体には、肉厚ジェル入りのサドルカバーを装着)

同じくbenelliの、こちらはmini Fold 16。たたんだ状態で転がして移動ができる便利な機能を持っており、 16インチとコンパクトでありながら、1回の充電で走れる距離(航続可能距離)は80kmものスペックを持ち合わせている。バッテリーはメインフレームに内蔵。フロントハブにモーターを内蔵することで、前輪はアシストが働き、後輪はライダーの漕ぐ力で二輪駆動となることで、安定した走行性を実現している。(こちらの車体にも、肉厚ジェル入りのサドルカバーを装着)

手前(赤色の車体)は、世界最大の電動アシスト自転車市場であるヨーロッパにおいて、そのデザイン&性能で高い評価を受けているBESV(ベスビー)のPSA1。タフなフレーム強度に加えてリアサスペンションの性能が高く、街乗りからロングライドまで、乗り心地良く走れるeBike。♦︎奥は、アーバンコミューターをキーワードにフォールディングバイクやノンフォールディングミニベロ、クロスバイクなどをラインナップするTern(ターン)の、ドイツのボッシュ社製eBikeシステムを搭載したプレミアムフォールディングバイク Vektron S10。短時間充電、長距離走行、静かでパワフルなアシストなどが特徴の、ハイスペックなeBike。専用のフェンダー(泥除け)とリアラック(キャリア)もオプションで用意され、社外品のチャイルドシートや前カゴも装着可。
それでは因島サイクリングへ。因島は日本遺産の村上海賊、八朔発祥の地、島をいろどる除虫菊、造船業などで有名ですが、ポルノグラフィティのふるさとと言った方が馴染みがある方がおられるかも。島全体の時間がゆったりとしていて、のんびり観光することができます。時間があれば除虫菊畑や、標高226.9mで因島を代表するビュースポットの「白滝山」まで上ってもいいかも。eBikeなら大丈夫。
人気の和スイーツを目指し、因島大橋記念公園にある「はっさく屋」に立ち寄りました。急な坂を上ったところにありますが、eBikeなら大丈夫。レストハウスだった建物をリフォームした店内は、すぐ目の前に因島大橋が見える絶好のロケーションです。

もぎたてを新鮮な内に大福にした今期の「はっさく大福」が始まったばかりなので、もちろん「はっさく大福」をいただいた。もぎたての八朔は歯ごたえがあり、酸味が強いが、これがまた美味しい。この感動的な美味しさは、特に、大福が好きな方には絶対にオススメ。尾道の特産品である八朔は因島が発祥と言われている。
向島ライドで体験する夕暮れの瀬戸内
今回のツアーで最後の島となる向島を走り始めた頃には、だいぶ陽が傾いてきました。しまなみサイクリングが初めての方でも、推奨ルートに整備されているブルーラインがあるので安心ですね。

ブルーラインの青色は、しまなみ海道を象徴する色として「しまなみブルー」が採用されている。細かな粒状の突起により滑り止め効果のある舗装がされており、通常の道路区画線と比べ,濡れた状態でも非常に滑りにくくなっている。推奨ルートが分かりやすく案内されていることに加え、車道を走行する自転車利用者に対し左側走行を促し、また自動車運転者に対しても自転車への注意を喚起してくれる。
サイクリングの最後は、対岸に尾道市街地を望む、尾道水道沿いの路地。細い裏道を辿りながらゆっくり風景を楽しめるのも、自転車ならでは。坂の町「尾道」の風景を楽しむ一番のスポットが、対岸となるこの向島(むかいしま)。尾道駅から千光寺までの印象的な町並みを、ゆったり静かに味わうことができます。透明度の高い海に青い空のある日中も良いですが、夕暮れの風景も美しい。
尾道水道の印象的な風景に浸りながら、今回のツアーは終了しました。eBikeで巡る島旅、いかがでしたか?
「レンタサイクルステーション 尾道ベース」を利用すれば、手ぶらで尾道入りし、ハイスペックなeBikeで誰でも楽にしまなみサイクリングが楽しめます。利用には、公式サイトの予約ページでレンタルしたい車体を選び、日時や連絡先を予約フォームで記入するだけ。料金は5時間プランで3,000円〜5,000円(非eBikeは2,000円)、1日プランで5,000円〜7,000円(非eBikeは3,500円)、その他1泊2日もあります。様々なタイプの自転車があるので体格や脚力に応じて車体を選び、ファミリーで走るのも良いですね。しまなみサイクリングで待ち望まれていた夢のようなサービス、ぜひ皆さんも利用してみてください。