昨年から日本でも爆発的に広まりだした、スポーツタイプの電動アシスト自転車「eBike」。先日開催された自転車イベント「サイクルモードライド大阪2019」で取材した各社の最新モデルを中心に、ご紹介します。
日本国内でこれまで電動アシスト自転車というと、いわゆる“ママチャリ”的なシティサイクルや子乗せタイプがほとんどでしたが、ここ数年でヨーロッパにおいてスポーツタイプの電動アシスト自転車(以下、eBike)が一気に広がりました。日本では独自の法規制があることから海外モデルをそのまま日本で販売できない都合がありましたが、これまで一般車(シティサイクル)の電動アシストを販売していた日本の大手メーカーがスポーツタイプのeBikeを発表したり、ヨーロッパで支持されている電動アシストメーカーが日本向け製品を発表するなどし、昨年2018年は「eBike元年」と言われるほど多数の製品がリリースされ注目を浴びました。eBikeには、ロードバイクからクロスバイク、マウンテンバイク、折りたたみタイプを含むミニベロまで用途に応じて様々な製品が発売されていますが、今回はミニベロ(折りたたみを含む小径車)タイプのeBikeをご紹介します。
<ミニベロとは>
ミニベロとは、タイヤ径が小さい自転車(小径車)の総称で、折りたたみ自転車や、ダイヤモンドフレームなどの折りたためない小径車のことを指します。BMX車は慣例として含まれません。ミニベロは、街乗り用として誰でも気軽に楽しめる自転車でありながら、その可愛らしい見た目に反して走行性能の高いものも多く、軽量化やメカニカルな機構などマニアックでディープなバイクカスタムも楽しめる自転車です。また、簡単にコンパクトになる折りたたみ自転車(フォールディングバイク)は自宅や職場での保管にも便利で、車や公共交通機関を利用した輪行(りんこう)で何処へでも連れて行けることから、旅のツールとしても多くの方に利用されています。
<eBikeのメリット>
eBikeが広まり始めたばかりの日本では、昔はロードバイクに乗っていたものの加齢とともに体力が低下してきた年配の方や、ロードバイク乗りの男性が奥様と一緒に走るために購入されるケースも多いようですが、最近では純粋なスポーツ目的でのeBikeのメリットに注目が集まっています。例えば、電動でアシストされると運動にならないのではないか?と思われる方も多いと思いますが、実は、加速や登坂時の負荷の高いところを電動アシストで補い、軽い負荷を長時間続けることで効率的に有酸素運動をすることができます。競技のように走るのではなく、身体の引き締め、ダイエット効果を目的に考えると、eBikeはとても優れた自転車と言えます。
<ミニベロタイプのeBikeの特徴>
出足が軽く小回りもきくミニベロは街乗りに有利な反面、高速走行時の巡航性がロードバイクに比べて劣ると言われますが、日本国内では電動アシストは24km/hまでという規制があるため、高速巡航向きのロードバイクよりストップ&ゴーを頻繁に繰り返す街乗りに向いたミニベロにこそ、電動アシストのメリットがあります。
逆に、バッテリーやモーターにより車体重量が増えることで気軽に持ち運びしにくくなることから、フォールディングバイクを折りたたんだ際のコンパクトさは、屋内での保管と、移動については車に積む程度になることが考えられます。バッテリーの容量が小さめで軽いタイプや、折りたたんだ状態で転がせる製品など、用途に応じた選択をしましょう。
<ミニベロ限定 eBikeのラインナップ>
今回は、2019年3月2日(土)・3日(日)の2日間、大阪 万博記念公園で開催された「サイクルモードライド大阪2019(CYCLE MODE RIDE OSAKA 2019)」に出展していたブランドの製品を中心にご紹介します。
*ブランド名のアルファベット順に掲載しています。
benelli / mini Fold 16
1911年創業のイタリアのオートバイクメーカー「ベネリ」が、2011年に迎えた100周年でeBikeの開発をスタート。現在MTBタイプのeBikeを3モデルと、小径折りたたみタイプを3モデルラインナップしている。今春デリバリー予定の「mini Fold 16」は16インチサイズで内装3段変速を装備、BAFANGのアシストユニットによる航続距離は最長45km、カラーはホワイトとブラックの2色展開。バッテリーはフレームに内蔵されている。
*公式サイト(プロト)
*製品ページ

チェーンリングから後ろを下から前方に折りたたみ、キャスターで押し歩くことができる。ハンドルポストを折りたたみ、シートチューブを引き抜くと、よりコンパクトになる。車体重量は17.6kgだが、転がせるので重さはそれほどネックにならない。

「mini Fold 16」以外の2モデルは20インチモデルで、リアキャリアにバッテリーがさり気なくレイアウトされている。手前は7段変速、ディスクブレーキ装備、航続距離は最長65kmの「ZERO N2.0」で、フレームカラーはホワイトとブラックの2色。向こうの2台はファットサイズタイヤ(20×2.4)を装着させた「ZERO N2.0 FAT」。マットブラックとミリタリーグリーンの2色をラインナップ。
BESV /PSA1
世界最大の電動アシスト自転車市場であるヨーロッパにおいて、そのデザイン&性能で高い評価を受けているBESV。小径車は定番化しているが近年は小径以外の製品を意欲的にリリースしている。「PSA1」は2014年グッドデザイン賞BEST100を受賞した人気モデル「PS1」のエントリーモデル。写真はその2018年限定カラーMatt Black仕様の車体。なお、今年も夏頃、2019年限定カラーが発表される見込み。また、それ以外にも年内に向けて小径車で大きな展開が予定されていて、目が離せない。
*公式サイト(BESV JAPAN)
*製品ページ
Bianchi / Lecco-E
Bianchiはブランドカラー「チェレステ」が日本でも人気の、イタリアの有名バイクブランド。Lecco-EはBosch製 eBike System(Bosch Active Line Plus)を採用し、可愛いルックスながらも高品質なeBike。カラーは写真のCK16と、Matte White、Matte Blackの3色展開、折りたたみではないが街乗りでは活躍しそう。
*公式サイト(サイクルヨーロッパジャパン)
*製品ページ
Daytona PotteringBike / DE03
バイクパーツの製造や販売で長い実績のあるデイトナが作った、電動アシストに全く見えない電動アシスト付きのミニベロ。当初はフォールディングバイクDE01やその上級グレードDE01S、DE01Xを展開していたが、昨年夏にクロスバイクタイプのDE02や、このノンフォールディングミニベロタイプの「DE03」がリリースされて、ラインナップに幅が出ている。
*公式サイト(デイトナ)
*製品ページ

バッテリーはレザーバッグに収納し、モーターはハブモーター、ハンドル周りにメーター類を配さないことで、一見普通の自転車のようにスッキリと仕上げられているのがDaytona PotteringBikeの特徴。このダイヤモンドフレームのDE03も、ごく一般的なミニベロに見える。
HARRY QUINN / PORTABLE E-BIKE
毎年話題となる製品を発表するGICのブース。今回話題のモデルの一つは、Harry Quinnの電動アシスト自転車 PORTABLE E-BIKE。コンパクトに折りたため転がして移動も可能、重量も電動アシストとしては軽めの14.6kgながらも、ロングドライブLOWモード時の航続距離は最大80kmを達成。135,000円という価格設定と併せて、絶妙なスペック設定となっている。
*公式サイト(GIC)
*製品ページ
GICではその他、TRANS MOBILLYのULTRA LIGHT E-BIKE(14inch / 16inch)といった、コンパクトなeBikeも展開している。
LOUIS GARNEAU / ASCENT e-sports
カナダのケベック市に本部を置くルイガノからは、ミニベロのEASEL 9.0をそのままeBikeにしたような雰囲気の「ASCENT e-sports」がリリース。SHIMANO STEPSを搭載し、大容量バッテリーと3段階のモード切替で最長115kmの走行が可能。フロントバスケットやリアキャリア、フェンダーなどのオプションも充実。
*公式サイト(あさひ)
*製品ページ
Qi CYCLE / EF-1 Pro
2012年に健康とスポーツを専門分野としたインターネット・テクノロジー企業「Qi CYCLE」が開発した折りたたみeBike。16インチサイズで内装3段変速、フレーム内蔵型のバッテリーによりスッキリしたルックスが特徴。
*公式サイト(GSジャパン)

モーターはフロントに装備。トルクセンサーが感知した踏力が伝達され、前輪を回転させる。フロントブレーキはTEKTRO製キャリパーブレーキを採用。極太アルミパイプを纏ったフレームの前後にはLEDライトが内蔵され、夜間時の走行においても高い視認性を確保。
Qualisports / Q2
DAHONと同じ3ステップの横折式を採用したQualisportsのeBikeは、16インチと20インチの2モデルをラインナップ。日本の輸入代理店 オオトモのWebにはまだ掲載されていないが、出展ブースでは20インチモデル「Q2」の資料を配布していた。
*公式サイト(オオトモ)*Qualisports未掲載
*公式サイト(海外サイト)

バッテリーを鞄の中やリアキャリアにさり気なくレイアウトしたり、フレーム内蔵型にすることで電動アシスト自転車とは分かりにくい製品が増えつつあるが、QualisportsのeBikeではシートポストに内蔵。シートポストの下からコードが出ている。3〜4時間でフル充電、最長約45kmをアシスト。
Tern / Vektron S10
アーバンコミューターをキーワードにフォールディングバイクやノンフォールディングミニベロ、クロスバイクなどをラインナップするターンでは、自動車部品のトップブランド、ドイツのボッシュ社製eBikeシステムを搭載したプレミアムフォールディングバイク「Vektron(ヴェクトロン)」を展開。短時間充電(2.5時間)、長距離走行(最長100km)、自然で静かなアシストなど、他ブランドの製品と比較してもハイスペックな製品群に位置付けられる。写真の車体には、昨年(2018年)12月に発表されたVektron専用のフェンダーとリアラックが装着されている。
*公式サイト(アキボウ)
*製品ページ

ドライブユニットには、3軸センサーにより1秒間に1,000個もの動きを測定し、最適なスピード、電動アシストを実現するBosch社製のActive Line Plusを搭載。美しいデザインにもこだわっており、国際的なプロダクトデザイン賞のレッド・ドット・デザイン賞を2017年に受賞している。

明るい環境下でも視認性に優れるディスプレイ(Intuvia)が搭載されたハンドルバーは、Ternが特許を取得しているステムでライディングポジションを簡単に変更でき、シーンに応じた変更のほか、家族など体格の異なる人とも共用しやすい。エルゴグリップ採用で、長時間走行も疲れにくい。フロントとリアにはバッテリーから電力が供給されるライトを標準装備。

ドイツの老舗メーカー「 MAGURA 」のHydraulic Discブレーキを採用し、あらゆる天候のコンディションでも難なくブレーキングをこなす。ブレーキレバーには、アルミ素材に比べ非常に軽く高い剛性を持つ「カーボテクチャ」と呼ばれる素材を採用。小さな力で細かくブレーキを調節できる。

計算され配置されたバッテリー・モーターや太めのタイヤ、低重心フレームは、安定性とスポーティな走行性能の両立を実現。新発売のリアラックに大容量のパニアバッグなどで積載しても、安定したライドが期待できる。リアラックは、ワンタッチでバッグの脱着が可能なKLICKfixに対応。また、フェンダーの装着で雨天後の路面でも気にせず走行できるようになり、より普段使いにも便利に。

Tern独自の素早くコンパクトに折りたためるシステムで、室内保管や車への積載に便利。大容量のバッテリーとフォールディング機能を備えている分、車体の重量は若干重くなっているが、シートポストを伸ばして折りたたんだ状態で押し歩きができる。
— / Z1
Qualisportsと同じくオオトモが代理店となるeBike。ブランド名は未定で、モデル名は「Z1」とのこと。資料もまだなく、参考展示されていた。スタイリッシュなフォルムで、今後が楽しみだ。
*公式サイト(オオトモ)*Z1未掲載
<スペック比較表>
サイクルモードライド大阪2019で取材したミニベロを中心としたスペックの比較表。高スペックな製品ほど良いという訳ではなく、自分の使い方にあったものを選ぶことが求められる。例えばバッテリーは車体重量にも関係するため、大きければ大きい方が良いというわけではないものの、充電回数が増えると劣化が早まるという考え方も。ただし最近の製品は、バッテリーが切れてアシストが無くなっても極端にペダルが重くなるわけではなく、普通程度に戻るだけも製品が多いので、トータルでバランスを考える必要がある。