「利便性ばかりがクローズアップされているが、ミニベロは実はレースでも有利である」。
北米最大のハンドメイドバイクの祭典、「NAHBS」における連続受賞をはじめその作品が世界で数々の賞に輝き、世界中の自転車ファンを虜にしてきたCHERUBIM(ケルビム)を展開する今野製作所の今野真一氏に、ミニベロについて伺いました。今野氏自身のレースでの経験を基に生み出されているケルビムのミニベロ「CR」や、ハンドメイドという根源的な手法のメリットなど、ぜひご覧ください。
「東京サイクルデザイン専門学校(TCD)」の系列コースとして2020年より大阪に “自転車メカニックコース” が新設されます。その記念イベント「CYCLE STUDY」が、2019年8月下旬に水野学園の主催で大阪で開催されました。同コースの教育顧問が今野氏である関係から会場にはミニベロ「CR」を含むケルビムの歴代モデルが多数展示され、今野氏に話を伺うことができました。MINI LOVEでは単刀直入に、今野さんにとって「ミニベロって実際どうなの?」という質問を投げかけました。その回答が、冒頭の「利便性ばかりがクローズアップされているが、ミニベロは実はレースでも有利である」でした。
<小径ホイールの特性を活かすことで、競技志向の走りができる>
ミニベロマニアが密かに気になる「ミニベロって実際どうなの?」に対する今野氏の回答は、以下のとおりです。
「レースには規則がありミニベロは出場できないことが多いが、700Cと混在したレースでも金メダルラッシュに沸いたこともあるくらい、ミニベロは高速走行の面でも実は優れている。」
「ケルビムを買い求める方はデザイナーなどデザインやトレンドにこだわりを持つ方が多く、またミニベロ全体としても小回りがきく点や収納性など利便性で選ばれることが多いが、ケルビムでは700Cと対等にレースで勝つことを意識した競技志向のミニベロを作っており、普段使いのみを意識して購入される消費者との間には少し意識のギャップを感じることもある。」
(今野氏自身も)「ミニベロでホビーレースに出ていたことがあるが、コーナーでの立ち上がりやドラフティング(集団走行での風除け)走行でも700Cに比べて有利であることを感じていた。」
そのことから、「ミニベロを街乗りやセカンドバイクとしてのみ捉えるのではなく、きちんとした性能を持つ一つの選択肢としてあってもいい」と言う。「多くのメーカー自体がミニベロを利便性だけで語る場合が多く、なかなか競技志向のミニベロが出てこないのが残念だ。」
<ケルビムは本気でミニベロを作っている>
「ケルビムのミニベロでは、加速性、ドラフティング、クイックなハンドリング等、小径ホイールの特性を最大限に活かしたジオメトリーを追求している。多くのメーカーがクイックなハンドリングをネガティブに捉え、安定した直進安定性を追求するためにホイールベースを長くする傾向にあるが、フレームが大きく、重くなり、小径車の特徴を活かせていない。」
「ケルビムのミニベロ CRでは、フレームの三角形をいかに小さくするかにこだわり、ポジションを前傾させ、ヘッドアングルを寝かさない、フロントフォークをオフセットさせない、ホイールベースを詰めるなどし、クイックなハンドリングを可能にしている。ケルビムは本気でミニベロを作っている。」
性能面だけでなく、美しさや細部のこだわりもマニア心をくすぐるケルビムのCRには、MINI LOVEが2012年に開催したイベントで初代「ミニベロ親善大使」に任命した石井正則さんも乗られているそうです。ディテールの写真まではあまりお目にかかることがないので、拡大してご覧ください。
ライダーが自転車に合わせ妥協点を探すのではなく、ライダー一人一人のために作られるべきだと考え、ハンドメイドによるフルオーダーに取り組んでいるケルビム。決して敷居の高い特別な世界ではなく「人間エンジン」を持つ自転車にとって当然の答えだと考えている。
<これからの自転車は何処へ行くのか>
当日は会場で、「CYCLE SPORTS」編集長 吉本司氏と「ケルビム」今野真一氏によるトークショーも開催され、質問に合わせてそれぞれの思いが語られました。(以下は、今回の記事にあう質問への回答の抜粋です)
質問:自転車は軽いほうがいいの?
「軽量化で有利になるのはヒルクライムだけ。ヒルクライムで車重1kgの差は分からない。軽くすることで失うもの(デメリット)が多いことから、某アメリカンブランドが軽量化競争をやめた。ケルビムでは「やっとか」と言う感じ。」
質問:クロモリフレームの今後の展開はどうなる?
「様々な素材が高次元で揃い、対等に選べる時代になった。大きなメーカーでは製造コストからアルミは無くなり、安く作れるようになってきたカーボンに移行する。チタンはそのままあるとして、クロモリは幅をきかすようになる。オーダーメイドとしてもクロモリは都合が良い。」
「最初の1台や一緒に旅をした車体など、昔の思い出の詰まったクロモリフレームを直して乗りたいと依頼してくる人も多い。所有欲を満たしてくれるのがクロモリフレーム。また、ノスタルジックなイメージとしてのクロモリではなく、今のクロモリは進化している。例えばネガティブに「柔らかい」と言われることがあるが、現代のクロモリフレームは全然柔らかかくない。」
質問:オーダーフレームの良いところ
「自転車はサイズが重要なので、自分の体格にあったサイズを追求できるオーダーが早道。また、ライダーの能力に合わせて、剛性を調整できるのもオーダーフレーム。剛性の調整は、レースでは当たり前。」
「自転車はバランスで乗るので、フレームに対してどこに乗るのか、個人の乗り方や体格にあわせて微調整できるオーダーフレームは有利。サイズ、寸法、ポジション以外にも本来は調整できることを、選手でもメーカーの自転車に乗っている方はご存知ない。」
「良いものというよりも、コストや手間など商業ベースでメーカーが動いているのが残念。業界は、商業ベースで動く大手メーカーと、こだわりを持ってモノづくりをする小さな工房に分かれていくのではないか。」
<小径の特性を最大限に活かしたケルビムのミニベロ>
CR
Compact Road Bike for Every Day Fitness and Commuting
スポーティーに街乗りを楽しむ
加速性、ドラフティング、クイックなハンドリング等。小径ホイールの特性を最大限に活かしたジオメトリー。街乗りから競技志向の走りまで楽しめる一台。
Frame set:CHERUBIM CR Frame / 1-1/8”Steel Fork
Fork:1-1/8”Steel Fork
Size:460 / 500 / 540
Color:Order
Weight:about 1.9kg
Tubes:Cherubim Original Mix(Kaisei, Reynolds, Columbus, Dedacciai)
Price
・Frame Set(メッキ無し, 単色):¥250,000
・Complete Bike(完成車):¥350,000〜(SHIMANO105相当参考価格)
*Link → CR製品ページ