大阪で花見ゆうたら、造幣局の通り抜けやで。いえいえ、それだけではありません。桜宮の大川沿いや、大阪城公園、住吉公園に万代池公園、花博記念公園鶴見緑地、靱公園、土佐稲荷神社、聖天山公園、桃ヶ池公園、城北公園、千島公園、柴島浄水場、「町ぐるみ博物館」の平野など、いずれも桜の名所として名が通っています。今回は寺町としても有名な上町台地の、桜を散策しながらのサイクリングをお届けします。
上町台地(うえまちだいち)は大阪平野を南北に伸びる丘陵地・台地で、北は天満橋、大阪城付近から南は天王寺あたりまでをイメージするが、実際の地形的には住吉大社あたりまでを指す。今回は玉造駅前をスタートし、寺町のイメージが強い谷町九丁目から四天王寺までを谷町筋沿いに南下、また北上してくるルートを走ってみた。丸一日使えば徒歩でも巡れる範囲だが、自転車を使えば効率よくまわれ、程よい速さなので美しい景色を見落とさず走ることができる。
宰相山西公園
玉造駅を起点に最初に立ち寄ったのは、真田山陸軍墓地と三光神社の北側に広がる宰相山(さいしょうやま)西公園。近所の子どもたちが遊びまわるごく普通の公園でほのぼのしていて、桜の名所として取り上げられることは無さそうだが園内に桜は多い。
宰相山公園
市内では珍しい高低差が見られる、斜面を利用した公園。緑に溢れ、夏は木陰での避暑にも良さそう。大坂冬の陣で真田丸を攻撃した前田利常が陣を張った場所と言われるが、住宅街の中の裏山といった雰囲気。
高津宮(高津神社)
上町筋、谷町筋を超えて西へ移動。古典落語「高津の富」の舞台としても知られる高津宮(こうづぐう)は、大阪市内で有数の花見スポット。平日休日を問わず多くの花見客が訪れ、屋台も並ぶ。ライトアップされた夜桜も鑑賞できることから、暗くなってからまた立ち寄ることに。

谷町界隈は大阪平野と上町台地を繋ぐ、大阪では珍しく坂道がたくさんあるため、苦にならないよう流行りのeBike(電動アシスト自転車)を利用。車体はTern(ターン)のVektron S10(ヴェクトロン S10)。
上汐公園
周囲はオフィスが多いイメージだが近年マンションが増えたからか子どもが多く、遊具も充実している活気のある公園。桜も多く、近所の住民や仕事帰りの社会人にも花見スポットとして夜まで賑わう。
天神坂
四天王寺前まで南下し、逢坂(おうさか)で松屋町筋まで坂を下る。南北に走る上町台地の西側の斜面で、松屋町筋と谷町筋を繋ぐ7つの坂を総称して「天王寺七坂」と呼び、その最も南に位置するのが国道25号の「逢坂」。それぞれの坂には由来があり、散策ルートとしてもよく利用される。写真は南から数えて2本目の「天神坂」。途中、菅原道真を祀る安井神社へ通じており、坂の名の由来となっている。坂の下の小さな公園にひっそりと佇む桜も、いい雰囲気を出している。
清水坂
上町台地の主役は坂だ。フラットな大阪市内にあって、起伏に富んだ上町台地は坂の宝庫。坂のある風景は美しい。この清水坂(きよみずざか)は新清水清光院に登る坂道で、ここから見る景色は上町が高台であることを改めて気付かせる。「天王寺七坂」にはこの坂のように車が通れない細い石畳や石段からなる坂も多く、両脇の壁や石垣との組み合わせが美しいため撮影やスケッチをされる方も。

今回利用したVektron S10は、折りたたみ自転車ながらもハイスペックな点がウリ。1回の充電で最長100kmのアシスト走行も可能な性能は、片道70kmのしまなみ海道を走るものであって近所を散策するにはオーバースペックな印象があるが、充電回数が減るということはバッテリーの劣化を最小限にできるというメリットもあり、デイリーな用途にも十分メリットがあると言える。何より、コンパクトに折りたたんで屋内で保管できるのも嬉しい。
西照寺
松屋町筋を少し北上すると、塀越しに美しい桜が目に入った。ここに限らず、上町台地は仏教寺院がたくさん建ち並ぶ静かな寺町で、このように塀越しに素晴らしい桜の木々を楽しめるところが多い。
口縄坂
坂の下から眺めると道の起伏が蛇に似ているところから、「蛇」を示す言葉「口縄」から名付けられたと言われる口縄坂。七坂のうち最も一番道幅が狭く、細い坂を上ると途中に大阪府立夕陽丘女子高校の跡の石碑があ、上りきるとや織田作之助の「木の都」の一節を刻んだ碑がある。何かのアニメに出てくる風景のようだ。天王寺七坂をテーマとしたアニメがあっても面白そうだ、などと妄想しながらシャッターを押す。(後日調べてみると、天王寺七坂は多くの小説に登場しているようだ)
高津宮(高津神社)
日が暮れたのでライトアップされた桜を期待し、昼過ぎに立ち寄った高津宮を改めて訪れた。咲き乱れる桜というのは、ここのようなことを言うのだろう、と思うほどの美しさ。ここでは日没から22時までぼんぼりライトアップのある高津宮桜祭りのほか、公園に面してスタイリッシュなカフェでは(事前予約が必須だが)ディナーを楽しみながらの贅沢な花見もできる。
Vektronのコックピットに装備された、Bosch eBike Systemsのディスプレイ「Intuvia」。夜間のみならず明るい日光下でも視認性の高いディスプレイで、速度、走行距離、走行時間、航続距離といった走行データを確認できる。また、左親指で操作するリモコンにより、運転しながら簡単かつ安全にディスプレイを操作することが可能。
Vektronではフロントとリアにライトを標準装備。電動アシストのバッテリーから給電しているので充電の手間がなく、ハブダイナモによる抵抗や重さもない。フロントライト(Valo™ Direct Light)の明るさを確認してみたが(写真)、41ルクス、150ルーメンのスペックは確かに明るく、夜間走行をより安全なものにしている。後付けではないので盗難の心配もない。
妙徳寺
谷町筋の1本西の静かな通りで空堀商店街からもすぐの妙徳寺は、この界隈で一番の格式を誇る多層構造の山門と、塀越しにも目立つ境内の桜がともに立派な貴重なスポット。東南角にあった桜は伐採されてしまったが、今も桜の季節はライトアップもされ、山門をくぐって真下から見上げる桜の厳かな姿には圧倒される。
今回はミニベロタイプの電動アシスト付き自転車 Vektronで移動しながら、情緒豊かな上町台地のちょっとした桜スポットを巡ってみました。思いのままストップ&ゴーを繰り返せる自転車だからこそ、桜を探しながらの散策にはとても都合がよく、中でも細い路地を行ったり来たりには小回りの利く小径車、ミニベロタイプの自転車が最適です。桜の見頃は1年のうちのほんの数日、一瞬ですが、機会があれば今回のスポットを巡ってみてください。